妖魔滅伝・団右衛門!
第4章 足軽退魔師団右衛門
「ところで昨日、何かあったか? 二人で飲んでいたのは覚えているんだが、途中から記憶が曖昧で」
「っ、団右衛門から聞いていないのか?」
「なぜそこで団右衛門の名が出る? あれがなぜか私の寝所で寝ていたのは、お前の差し金か」
「いや、それは……」
嘉明の無愛想な顔では、怒っているのか、ただ疑問をそのまま訊ねているのか量りにくい。清正は表面は冷静を取り繕うが、内心では団右衛門に悪態を吐いていた。
(あいつ、昨日の一件はうまく誤魔化すと大口叩いたくせに!)
昨晩、和解した清正と団右衛門は、結局朝方まで飲み明かしたのだ。その最中団右衛門は嘉明への取りなしを自信げに引き受けていたのだが、よくよく考えればその時既に団右衛門は泥酔していた。素直に信じた清正が愚かだったのだ。
「不可解と言えば、なぜか手首に縛られた跡のようなものが付いていてな。昨日まではこんなものなかったはずだが」
さらに嘉明は、赤く跡の付いた手首を清正に見せる。ここまで疑われたら、もうごまかしは無意味である。清正は絶縁や報復も覚悟し、口を開こうとした。