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妖魔滅伝・団右衛門!

第4章 足軽退魔師団右衛門

 
「――まあ、昨晩何があろうと、相手はお前だ。お前が私のためにした事なら、なんであろうと間違いであるはずがない。あまり気にするな」

「嘉明……」

「さて、昨日の話はこれで終いだ。せっかく見舞いに来てくれたのだから、こちらもまだまだもてなしたい」

 清正を見上げる嘉明は、清々しく微笑んでいる。その笑みに全ての答えを得た清正は、嘉明の胸、中心にある心臓の辺りを押さえた。

「生きているな」

 嘉明らしく、律儀に鳴り続ける鼓動。それが絶えていない事に、清正は胸の奥から喜びを感じていた。

「死んでたまるか。豊臣家の未来のため、私達はまだまだ戦わねばならないのだぞ」

「……なあ、もしもだ。もし、だが」

 歯切れの悪い清正の言葉に、嘉明は首を傾げ清正を見つめる。

「もし、お前がよければ俺の――」

 だがそこまで言いかけながら、清正の口は止まってしまった。

(俺の元に来いとは、やはり言えないな)

 団右衛門がいるとはいえ、鬼が間近に迫る地に置いていくのは心配である。出来るなら、その腕を掴み、自分の手元で庇護したかった。
 

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