妖魔滅伝・団右衛門!
第4章 足軽退魔師団右衛門
取りなしをすっぽかした事は、一応罪悪感を覚えているのだろう。共にいる嘉明の姿を見つけると、団右衛門は目を逸らし頭を掻いた。嘉明は冷めた目を向けながらも自分の隣を指差し、座るよう指示した。
「随分と遅い目覚めだな、団右衛門」
「いや、それは昨日酔い潰れたあんたの代わりに、清正の相手をしてだな……清正が予想以上に酒に強くて、つい飲み過ぎたというか」
「なるほど、そういう体で押し通すつもりだったか。まあいい、お前がどんな人間かはよく知っている」
座ってもなお顔を背ける団右衛門だが、嘉明はその顔を両手で押さえ、無理矢理目を合わせる。
「お前はいつだって私を守るつもりなのだろう? ならば後ろ暗い心などあるはずがない。前を向け」
「……はい」
向けられる全幅の信頼に、団右衛門は目を奪われ惚けてしまう。清正は二人の姿に笑いをこぼすと、未だ清正から離れない虎に話し掛けた。
「ふっ、お前の主人は色男だな。妬けてしまいそうだ」
虎に言葉が通じるはずはないが、団右衛門や嘉明にはそのまま聞こえてしまう。嘉明は手を離そうとするが、団右衛門はその手を掴むと嘉明に抱き付いた。