妖魔滅伝・団右衛門!
第4章 足軽退魔師団右衛門
「そうそう、オレの運命の人だからな。悪いが八千代にもトラにもあんたにも譲ってはやれないぞ」
「ばっ……よせ、離れろ!」
「やだ。なんか今日は妙に夢見が良くてさ、オレ機嫌良いんだ」
先程まで気まずそうにしていたのを棚上げにして、団右衛門は嘉明の背中をさする。あまりにも遠慮のない団右衛門に、嘉明は小声で問い掛けた。
「まさか、清正に秘め事まで全部あけすけに語ったのではあるまいな」
「流石にそれはねぇよ。んな事話したら、オレ今頃真っ二つになってる」
「じゃあ離せ、妙な誤解を受けたらどうする」
「いや、妙な誤解をしてほしいっつうか、一応牽制? ってつもり」
抱き合って、他の人間に聞こえないよう二人でこそこそ話していれば、なおさら蜜月に見えてしまう。団右衛門は眉間に皺を寄せる清正を目尻で確認すると、ようやく嘉明を離した。
清正は小さく溜め息を吐くと、虎に寄りかかり呟く。
「団右衛門、お前嫌な奴だな」
「あんたとは仲良くしたいと思ってるぞ? しかしそれはそれ、これはこれだ」
「口の減らない奴だ。まあいい……ところで、先程名を挙げていた八千代とは誰だ。虎以外にも妖魔を飼っているのか?」