妖魔滅伝・団右衛門!
第4章 足軽退魔師団右衛門
「嘉明の小姓にいただろ? ちょっと毛色が薄くて、飛び抜けて可愛い奴。そいつが嘉明にべったりでさ、オレにとっても弟分みたいなもんなんだ」
だが清正は、顎に手を当て唸る。すると嘉明が、清正の代わりに口を開いた。
「そういえば八千代は、清正と顔を合わせていないな」
「おい、まさかまたいなくなったとか言わないよな」
「いや、私とは顔を合わせているからそれはない。トラが虎になったと話したら酷く怯えていたから、近寄らないようにしているのだろう」
虎、と言うだけで恐ろしいというのに、八千代はなぜか猫又に嫌われているのだ。その猫又が虎になったと知れば、恐れるのは当然である。猫ならともかく虎ならば、爪で引っかかれるだけでも致命傷なのだから。
(あれ……でも猫又が妖虎になったのは、夜になってからだぞ? それより前に、顔を合わせてもおかしくはないような)
「団右衛門、トラを猫に戻す事は出来ないのか? 虎は強くて頼りがいがあるが、食事の問題もある。今日だけでも大変だったのだぞ」
頭にふと浮かんだ、団右衛門の疑問。しかしそれは、嘉明の問いに気を取られ忘れ去られてしまった。