妖魔滅伝・団右衛門!
第4章 足軽退魔師団右衛門
「まことに申し訳ございません。殿がお目覚めになられた後、まず伝えなければならない事柄として、一番始めに顔を合わせるであろう八千代に書簡を預けていたのです。しかしこの八千代、それをすっかり失念したようで……八千代もさることながら、確認を怠った我々全てに責任があります」
小姓頭は今にも腹を切りかねない気迫で、八千代はずっと啜り泣いている。仕事を怠ったのだから罰するのは当然なのだが、二人の様子を見ていると嘉明は同情すら覚えてしまった。
「……いや、これは今日届いた書簡だ。今日はずっと清正と一緒だったからな、渡す機会がなかったのも仕方あるまい。しかし八千代、気を付けなければならないぞ」
「嘉明様!」
「このような事で命を散らすような真似をするな。この先も、変わらず私のために力を尽くしてくれ」
小姓頭も八千代も顔を上げ、驚きに目を丸くする。嘉明はそんな二人の肩に手を置くと、慰めるように軽く叩いた。
「この御恩……必ず報いてみせます」
小姓頭も瞳に涙を滲ませ、深く頭を下げる。八千代の失態は大きな騒ぎにならず、静かに幕を閉じた。