妖魔滅伝・団右衛門!
第4章 足軽退魔師団右衛門
次の日の朝、嘉明は団右衛門を寝所まで呼び出す。しかし今日は、朝に呼び出される理由はないはずである。団右衛門は気分を妙に高揚させながら、部屋まで向かった。
(これは、まさか朝からお誘いか? 今日は夜のはずなんだが、もしかすると我慢出来ないのかも……)
しかし部屋に入って目に入ったのは、正装した嘉明。明らかに色気のない姿に、それが当然にも関わらず、つい舌打ちしてしまった。
「出会い頭に舌打ちとは、いい度胸だな」
「だってさあ、あんた……いや、いい」
言えば呆れられるのは目に見えているので、団右衛門は溜め息で誤魔化す。そして早々に呼び出された理由を訊ねた。
「で、何の用だ?」
「ああ、実は秀吉様の茶会があってな。近日京に向かう事になったんだ」
「京? って事は、外に出なきゃいけないって事か」
鬼が不穏な行動を取っている今、外に出るのは危険である。とはいえ、主君の命を安易に断るのも武士の不名誉である。どう警護しようかと考えていると、嘉明はさらに続けた。
「もちろん部下は付けて行くが、お前にも同行を頼みたい。鬼の一件で秀吉様にご迷惑を掛ける訳にはいかないからな」