妖魔滅伝・団右衛門!
第4章 足軽退魔師団右衛門
するとすぐに八千代は顔を出すが、その表情は重い。瞳は赤く腫れていて、誰の目から見ても泣いた後だった。
「こちらはこちらで、少し自虐が過ぎるな」
嘉明は呟き溜め息を漏らすと、八千代に訊ねる。
「清正はもう発つ準備を終えたか? 終わっているならば見送りに行く」
「は、はい。おそらくはもう……行ってらっしゃいませ」
「お前は、付いてこないのか?」
「このような顔で、嘉明様のお客様の前には出られません。それに、あまり嘉明様のお邪魔をしてはならないと言われていますから」
「そうか。私の自慢の小姓だ、清正にも見せてやりたかったのだが」
嘉明が平坦に語る言葉に、八千代は目頭を熱くし涙をこぼす。嘉明は何も言わず懐から手拭いを出して八千代に渡すと、部屋を出て行った。
「八千代、あんた何かあったのか?」
何も知らない団右衛門が訊ねると、八千代は手拭いで涙を拭きながら答える。
「ぼく、大事な書簡をお渡しするのを忘れちゃって……でも嘉明様はぼくを罰せず、庇ってくださったんです」
「へぇ、良かったじゃないか」