妖魔滅伝・団右衛門!
第4章 足軽退魔師団右衛門
「嘉明様にお仕えしてまだ日は浅いですが、ぼくってば失敗ばかりで、でも嘉明様はいつも寛大な心でお許しくださるんです。そのたび、恩を返さなければと思うのですが、恩は溜まっていくばかりです」
団右衛門は、ふと八千代が孤児である事を思い出す。拾った子を、未来有望である武家の子と同じ小姓としてそばに置くのは、他の家ではなかなかない事例だ。踏み込むのは失礼であると思っても、聞かずにはいられなかった。
「八千代は……孤児だって聞いた。どうやって嘉明と知り合ったんだ?」
「鬼が嘉明様をさらおうとした廃寺、あるでしょう? ぼくがそこをうろついているところに、嘉明が偶然検地に現れたんです」
八千代は手拭いを頬に当て愛おしげに目を閉じると、当時に想いを馳せる。
「ぼく、孤児と言っていますが本当はそれも分からないんです。八千代という自分の名は覚えているんですが、それ以外の記憶がなくて。嘉明様がいなかったら、ぼくは野垂れ死にしていたかもしれません」
「記憶がない? そりゃ……大変だったな」
慰めの言葉が見つからず、団右衛門はただありがちな言葉を掛ける。しかし八千代は、心配をかけまいと笑顔を作った。