妖魔滅伝・団右衛門!
第4章 足軽退魔師団右衛門
その声は、八千代の意識を乗っ取り嘉明を捕らえ陵辱した最大の敵、八代である。八千代は耳を塞ぎ目を閉じるが、声は頭の中に響いてきた。
『お前は儂と同じだ、いくら目を背けようと無駄だぞ? あの男が憎いのだろう。嘉明を醜い欲で汚し、杭で打ちつけるあの男が』
八千代は唇を噛み締め心を閉じようとするが、八代はそれを馬鹿にするように笑いながら侵入してくる。
『儂も奴が憎い。なあ八千代、儂とお前は同じだろう? 嘉明の潔白を守るため、邪魔者を共に排除しようではないか』
「――うるさい、黙れっ!!」
『口を聞いていいのか? あの男に、体を取られるから話すなと教えられたではないか』
「黙れと言っている!!」
するとその瞬間、ぴたりと声は止まる。静かになって重圧から解放されたせいか、八千代の全身からは汗が噴き出した。
八千代は高ぶる心臓を抑えるように荒く呼吸しながら、額の汗を着物の裾で拭い呟いた。
「同じなんかじゃない……ぼくは」
嘉明の手拭いを見つめ、八千代は拳を握る。
(嘉明様に仇なす者は許さない。鬼も……あの人も)