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妖魔滅伝・団右衛門!

第1章 夜討ちの退魔師団右衛門

 
「八千代、いるか?」

 嘉明は辺りを見渡しながら、八千代の名を呼ぶ。部下達も草を掻き分けながら境内の裏や周りを探った。

「殿、どうしてここに八千代がいると?」

「なぜだろうな。無断で城を抜け出したとすれば、ここにいるような気がしたんだ」

「つまり、それは……」

「勘だな」

 さらりと無鉄砲な事を漏らして、嘉明は崩れそうな寺を見つめる。そして、迷いなく足を進めた。

「危ないですぞ、殿!」

 扉を開こうとしたその時、中から物音が聞こえる。そして嘉明が手をかける前に、扉が開いた。

「嘉明様……」

 扉にかかるのは、まだ汚れを知らない白い手。色素が薄く瞳も髪も鳶色をした、幼さが強く残る少年は、嘉明もよく知る小姓・八千代だった。

「八千代、どうしてこんなところに?」

「それは、こっちが聞きたいですよ! なんで嘉明様がここにいるんですか?」

「お前がいなかったから探していた。会わせたい人がいる」

 真正直に話す嘉明の言葉に、八千代の白く澄き通った頬が赤く染まる。両手の指をせわしなく動かしながら、八千代は俯いた。
 

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