
妖魔滅伝・団右衛門!
第5章 悠久と団右衛門
「詭弁も大概にしろ。まあいい、今はもっと精を寄越せ。城の連中を前にしては禁欲するしかないのでな。体が疼いて仕方がないのだ」
「やれやれ。もし本当に『八千代』の兄がいたら、絶望に泣いているところだな」
「そんなものはいない。存在しないものに気を遣って、せっかくの好機を逃してたまるか」
「淫売め」
「そういう体にしたのは、貴様よ」
二人は部屋に近付く兵がいないか気にしながらも、交わりを解かずに絡み合う。鬼の気配も淫靡な気配も、決して外に漏れる事はなかった。
ひとまず悠久は馬番として雇う事に決まり、八千代騒動は幕を下ろす。そして次の日、今回の目的である茶会のため、嘉明は団右衛門や八千代を含む少数の家臣を連れ、会見先である屋敷に向かった。
とはいえ、団右衛門が直接天下人である秀吉に目通り出来る訳ではない。茶会へ向かった嘉明を待つ間、団右衛門は八千代に探りを入れようと口を開いた。
「なあ八千代、知ってるか? 関白って、黄金の茶室ってのを持ってるんだぜ。組み立て式でどこにでも持っていけるらしくてさ、今回もそれ使ってんのかな」
