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妖魔滅伝・団右衛門!

第5章 悠久と団右衛門

 
 茶会は滞りなく終わったようで、嘉明を始めとした諸将は充実した瞳をして戻ってくる。この後は、京に建設中である屋敷の様子を確認する事になっていた。挨拶もそこそこに移動を始め、門を出ようとしたその時だった。

「孫六ー!」

 嘉明の幼名を呼び、後を追いかけてくる陽気な男の声。振り向くと、小柄でひょうきんな猿顔の中年が手を振り駆けてきた。

「秀吉様!」

 団右衛門はそれが誰なのか分からなかったが、嘉明はすぐに彼――秀吉の名を呼ぶと、馬から下りて頭を下げる。当然嘉明と共に、皆同じように平伏した。

「ああ、よい。皆表を上げよ」

「秀吉様、いかがなされましたか?」

 嘉明は頭を上げると、秀吉に訊ねる。秀吉はからからと笑い、嘉明の肩を叩きながら答えた。

「いや、実は今、新しい馬を買おうとしているのだがな。余に相応しいのはどの馬か、ちと悩んでおったのよ。せっかく孫六が来ておるなら、意見を聞いてみようと思ってな。明日、付き合ってくれんかの」

「なんと、身に余る光栄です。秀吉様に相応しき強く気高き馬、この孫六が見極めましょう」

「助かるのう、馬の事は孫六に聞けば間違いないからの」
 

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