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妖魔滅伝・団右衛門!

第7章 さすらい団右衛門

 
「良いと思うからわざわざ厩へ足を運んでいるのだが……唐突にどうしたんだ」

 嘉明は馬を撫でながら、太助の問いに首を傾げる。太助は殿が相手だというのに、顔色一つ変えず堂々と言い放った。

「馬が素晴らしいと思うのならば、最近お好みになられている笛をお止めください。寂しく頼りない音色を聞くたび、馬が不安を覚え怯えます」

 その失礼な発言に、他の馬番達は震え上がり太助を取り押さえる。そしてざんぎり頭を下げさせ、慌てて謝罪した。

「ももも、申し訳ございません! この者の物言い、全ては私達の責任でございます!!」

 しかし肝心の嘉明は、特に怒る様子もない。自ら手を伸ばし顔を上げさせると、さらに訊ねた。

「私の笛は、下手か?」

「あまり上手とは言えないでしょう。しかし、殿の腕より気になるのは、笛そのものです。どこか妙なところに隙間でも空いているような、妙な音がいたします。せめて道具だけでも、良い物をお持ちになられては」

 止まらない太助の言葉に、馬番達は青ざめ頭を抱える。一方、嘉明は笑い出し、太助の肩を叩いた。

「お前は耳がいいな。その耳は、役に立つぞ」
 

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