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妖魔滅伝・団右衛門!

第7章 さすらい団右衛門

 
 馬番は嘉明の姿が見えなくなるまで見送ると、すぐに引き返し、さっさと馬に意識を奪われていた太助の頭を叩く。そしてその場に座らせると、太助に怒鳴りつけた。

「この、馬鹿者!! あのような無礼、殿でなければ全員が即刻その場で打ち首だぞ! 分を弁えんか!」

「無礼? 殿は笑っておられたではないですか。失礼であれば怒るはず、それがしは何も間違いは犯しておりませぬ」

「それは、殿が海より深くお優しいからだ! 鍛錬以外に趣味の一つも持たぬ殿が、珍しく笛へ夢中になられているというのに、そのお心を削ぐような真似までしよって」

「それがしには、殿は笛を楽しんで吹いているようには見えませぬ。楽しんでいる人間が、どうして寂しい音色を奏でるのですか」

 まったく反省の色を見せない太助は、まさしく「悪癖のある馬」である。それが好きだと言われても、馬番からすれば慣らしたくて仕方がない。馬番は太助の首根を掴むと、さらなる説教のため厩から引きずり出した。

 静かになると、残された馬番の一人――新たに雇われたばかりの男・悠久が他の馬番に訊ねる。
 

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