
妖魔滅伝・団右衛門!
第7章 さすらい団右衛門
「嘉明様は、いつでもあのようなお方なのですか?」
普通の武士なら、馬番が嘉明の趣味や道具に文句を付けるなど許すはずがない。悠久が疑問に思うのはもっともだと考えた馬番は、笑いながら答えた。
「ああ、いつでも下々の一人に至るまで目をかけてくださる、最高の殿様だよ。出来が悪くても一生懸命働けばきちんと見ていてくださるから、自然と皆やる気になるのさ」
「しかし、叱らなければ侮られるのでは?」
「そういう不届き者は、殿も許さないよ。けど皆、殿が下々のために苦心しながら働く姿を知っている。そんな人の気持ちを侮り裏切ろうとする輩なんざ、そうそういないさ」
馬番の声は熱く、心から嘉明を慕っているのだとよく分かる。悠久もつられて金色に近い目を細め、ぽつりと呟いた。
「……素敵な方ですな」
「殿に惚れたか? だが寵愛を受けるのは難しいぞ。殿は皆に優しい分、誰かを特別に愛したりもしないからな」
「そういうところが一番素敵なのです。願わくばわしだけを見てくだされば、もっと嬉しいのですが」
「はは、それは皆が思っている事だな」
