
妖魔滅伝・団右衛門!
第7章 さすらい団右衛門
裏から太助への説教が聞こえる中、悠久は呑気に笑う。そして声の漏れる裏を一瞥すると、馬番に手を合わせた。
「すまない、今のうちに少し抜けてもよろしいですか? その……用事が」
「ああ、八千代か? そうだな、厳しい目のないうちに行くといい。ああそうだ、これ、差し入れにやるよ」
馬番は悠久に干し柿を渡し、背中を押してくれる。悠久は丁寧にお辞儀すると、そそくさと駆け出した。
そして数刻後、悠久は八千代が謹慎している屋敷で、子どものようにはしゃいだ声を上げていた。
「それでな、儂が一番速く町まで着いたのだ。馬は威厳のある者が誰なのか分かるのだろう。どこぞの猫又と違って可愛いものよ」
「……おい」
「一番の褒美として、その日に皆が奢ってくれた饅頭は実に美味だった。鬼の世界にも、饅頭があればいいのだが」
「おい!」
悠久の上に座る八千代は、にやけた頬を両手で押さえると、淫らに繋がるそこをこねるように動かす。
「口より腰を動かせ! まったく、人がいないのをいい事に、好き放題遊びおって」
「よいではないか。何をするにも、八千代が謹慎を解かれなければ始まらん。儂は所詮馬番、近付く好機はなかなかないからな」
