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妖魔滅伝・団右衛門!

第7章 さすらい団右衛門

 
 悠久は八千代の腰を掴み揺さぶるが、相変わらず思考はよそに飛んでいる。充足した行為には、程遠かった。

「鬼は……特に純血の鬼は退魔師に狩られ、いつ絶滅してもおかしくはない種よ。仲間と群れる事も、共に笑う事もない。すぐ隣に取れる手のある人間は……幸せよ」

「戯れ言を。このまま欺き、人間ごっこを続けるつもりか?」

「あの退魔師も逃げた事だ、しばし人間ごっこに興じても罰は当たるまい。飯事に飽きたら……嘉明を娶ればいい」

「娶る?」

 今までとは違う言葉に、八千代は眉間に皺を寄せる。悠久は遠い目をしたまま、八千代に目をくれる事なく話を続けた。

「近くで接してよく分かった。あれは特別、その中でもただ一つの星よ。なに、人を鬼に変える力があるならば、探せば男を女に変える術もあろう。儂は、あれに己の子を孕ませたい」

「……餌ではなく、伴侶にふさわしいと?」

「その通りだ。だからな――」

 すると悠久は繋がったまま八千代を下に組み敷くと、火が付いたように激しく動き始める。ぬるま湯に突然沸いた熱に、八千代は思わず声を上げ涙を浮かべた。
 

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