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妖魔滅伝・団右衛門!

第7章 さすらい団右衛門

 






 山中村があると悠久が話していた場所は、焦げた大木を除いて更地になっていた。村の跡も、人間の影も見当たらない。だが大木に残された傷が、かつてここで起きた事件を物語っていた。

「木の子! ほら、干し柿やるからこっちこい。お兄さんといい事しようぜ」

 団右衛門は干し柿を片手に、焦げた大木の根っこに座る童三人に呼び掛ける。その童が着ているのは、糸を紡いだ着物ではなく、木の葉で出来た粗雑な着物であった。

「たいまし、こわい」

「ころされちゃう」

「ね」

 木の子と呼ばれた童――この辺りに住み着く妖怪は、言葉の割に楽しげである。それを見た団右衛門は両手を広げると、三人に向かい飛び込んだ。

「言う事聞かねぇ悪ーい妖怪は……食っちまうぞー!」

「きゃー!」

「逃げろー!」

「ね!」

 木の子達は散り散りになって逃げ出す。が、妖怪と言っても木の子は特別強いものではない。逃げる足は、団右衛門が半分の力でも捕まえられる速さだった。

 だが、団右衛門は追い付けない振りをして追いかける。

「逃げろ!」

「走ると、楽しい」

「ね!」
 

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