
妖魔滅伝・団右衛門!
第8章 八千代の想い
「トラ、お前は分かるか? あの男が、真に団の仲間か」
妖虎と化したトラは、地を這うようなうなり声を上げて一二三ににじり寄る。一二三は敵意がない事を示すように両手を広げると、笑みを浮かべ頷いた。
「どうぞ、お好きになさってください」
トラは一二三の匂いを嗅ぎ、体をつつく。そして嘉明の隣に戻ると、行儀良く座った。
「敵ではなさそうだな。逃げろとは?」
「城内に鬼が忍び込んで、誰かを襲っています。恐らく誰かを殺し力を得て、あなたも襲うつもりでしょう。大木の下なら、私は結界を張って守れます。今すぐ逃げましょう」
「団は、どこにいる?」
「……別の場所で、恐らくは交戦中です。そちらに気を取られて、まだ気が付いていないのでしょう。団さんもすぐ呼び寄せます」
するとトラは、乗れと言わんばかりに嘉明へ背を向ける。だが嘉明は拳を握り、一二三にもう一つ訊ねた。
「襲われている者は……助けられないのか?」
「今から団さんを呼び寄せても、間に合いません。私も、癒やしや守護は得意ですが、鬼を倒す牙は持ちません。私達が向かっても、最悪の事態になるだけでしょう」
