
妖魔滅伝・団右衛門!
第8章 八千代の想い
嘉明の頭によぎるのは、心臓を取られ無残に亡くなった部下達の顔。下手に鬼をつつけばどうなるか、嘉明も忘れた訳ではない。
「他の者も襲い、城を壊滅させる可能性は?」
「それはないと思います。無闇な殺生をして、団さんに気付かれては本末転倒。団さんを引きつけている間に速攻で極上の魂一つを奪い、誰にも気付かれないよう事を済ませるつもりでしょう」
「……ならば、私が城から離れた方が、皆の命を守れるか。結界は、信頼していいんだな?」
一二三が頷くのを見ると、嘉明はトラの背に乗る。寝巻きのままだが、着替えている余裕などなかった。
真に妖魔を根滅出来るのは、退魔師のみ。ならば城の人間に守備を任せても、犠牲を増やすだけになるのは目に見えている。
「行くぞ。大木の目星はついているか?」
「はい。こちらに来る時、しっかり確認しました。ついてきてください」
一二三を先導に、嘉明を背に乗せたトラは走り始める。一二三は城を出て、近くの森まで足を急がせた。
嘉明は振り返り城の方を眺めながら、悔しさに拳を握る。
(私のために、また一人死ぬのか。すまなかった)
