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妖魔滅伝・団右衛門!

第8章 八千代の想い

 
 誰が襲われているのかは分からないが、嘉明はその者を見捨て逃げている。武士とは主君を守るため、命を捨てる事も本望。しかし出来る限り死なずに済む方法を探るのが、主君の役目でもあるのだ。助けられない命の重みは、嘉明の肩に重くのしかかった。

 森の中にある巨大な松の木まで来ると、一二三は三人の童に変身する。驚く嘉明に説明もなく、三人になった子どもの一二三は木を囲み手をかざした。

「結界張るの」

「力を貸して」

「ね!」

 すると松が黄金に輝き、帳が下りるように辺りを包む。

「結界出来た」

「鬼から守ってくれる」

「ね!」

 ぼんやりと光る結界に、嘉明は手を伸ばす。それは触れると水のように波紋が広がるが、ほのかに温かく固さがある。一二三は見入る嘉明の着物の裾を引くと、三人横並びになり意気込んだ。

「一二三は団ちゃんを呼びに行くの!」

「一二三は結界を強くするの!」

「ね!」

 一人は固い結界を越え、走り去る。そしてもう一人は光の雫となり、結界の中に溶け込んだ。

「ね!」

 もう一人は嘉明の前で、仁王立ちになって構える。初対面にも関わらず尽くしてくれる一二三に感銘を受け、嘉明は一二三の頭を撫でた。
 

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