
妖魔滅伝・団右衛門!
第8章 八千代の想い
「疑ってすまなかった。しかしあまり無理はするなよ、お前は私の部下ではなく団の友だ。危なくなったら逃げるのだぞ」
「ね!」
一二三は首を振り、勇ましく胸を張る。会話は出来なくとも心意気は見える。嘉明は小さいが頼りがいのある一二三を慰労しようと、懐から笛を取り出した。
八千代が時を数えようと考えても、いつでも暗く混沌とした異空間では無意味だった。鬼に精を搾り取られ、腹が膨れるほど受け入れた後、気絶するように眠るだけの生活。幾度となく繰り返し、精神が磨り減り脱出を考える事すら忘れた頃。八千代はふと気付いて恐ろしくなった。
「成長、してない……」
数えていなくとも、長い時を鬼の贄として過ごしてきたのは確かだ。ならば成長期である八千代は背が伸び、骨から逞しくなり男へと変わるはずなのだ。しかし八千代の手は細く稚児のままで、視界が高くなった気配もなかった。
「なんだ、今頃気付いたのか。喜べ、八千代。鬼の精を注がれ続けた人間は、時間は掛かるが鬼へと変わる。さすれば半永久の命と、衰えない若さを手に出来るぞ」
