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妖魔滅伝・団右衛門!

第9章 最終決戦・団右衛門!

 
 すると、嘉明の頬に一粒の雫が落ちてくる。透明で温かなそれは、八代の目から零れていた。

「違う! 他の者が現れても、この気持ちに変わりはない! そんな、酷い事を言わないで……」

 八代は嘉明から手を離すと、次々溢れる涙を拭う。だがそれは拭いきれず、八代は子どものように泣きじゃくった。

「な……」

 嘉明の体は毒に犯され始め、力を失っている。しかし動けないのは、毒のせいではなかった。

「儂が好きなのは、嘉明様だけなのだ……!」

 八代は大きな手で顔を覆い、ただ嗚咽する。隠そうとしない悲しみに、嘉明は目を丸くし戸惑った。

「八代、お前――」

 嘉明が名を呼んだその時、八代の胸に背後から衝撃が走る。白く淡い光を放つ刃が、一瞬のうちに心臓を貫いたのだ。

「ぁ――」

 振り返れば、鞘に収めたはずの清正の刀を握った団右衛門の姿。その柄には、退魔師の札が巻き付けられていた。

「あんたのした事は、泣いたって喚いたって許される事じゃねぇ」

 札により極限まで高められた浄化の力が込められた刃は、八代の体に走る無敵の血流を断ち切る。刀を抜き、止めに一閃浴びせれば、傷からは青い血が噴き出した。
 

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