
妖魔滅伝・団右衛門!
第9章 最終決戦・団右衛門!
団右衛門は嘉明の手を取り救出して抱き抱えると、崩れゆく八代を見つめる。心臓の傷から八代の体は砂と変わり、この世から消えようとしていた。
「退魔師……憎き、退、魔――」
八代は崩壊を間近にしても、なお手を伸ばそうとする。しかしそれは届かず、団右衛門の足元で全て砂となった。
「……終わったな」
団右衛門はその場に座り込むと、骨から痛む傷を押さえながら溜め息を吐く。日の本を覆い尽くす程邪悪な気配はもはや存在しない。八代という鬼は、確かに今浄化されたのだ。
「嘉明……大丈夫か?」
抱き抱えたままの嘉明は、首を横に振り力無くうなだれる。鬼の毒も、精神の疲労もある。しかし、人としての命を保ったまま、団右衛門の元に帰ってきたのだ。
「ちょっと待ってろ、一二三の妖力を回復して起こしてやる。そしたら、皆治せるだろ」
だが嘉明は再び首を振ると、力ない声で団右衛門に尋ねた。
「……八代が、泣いた。あれが……真の涙、だったなら、私は――」
「……今は、何も考えるな。落ち着いたら、全部説明するから」
団右衛門は嘉明に軽く口付け、頬を撫でる。嘉明が頷き目を閉じると、傷の痛みを我慢しながら一二三の元へ向かった。
