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妖魔滅伝・団右衛門!

第9章 最終決戦・団右衛門!

 






『団さん。ぼく、団さんなんて大嫌いです。身勝手で、簡単に嘉明様を攫って、そのくせ恋敵だって分かってるくせに、ぼくに優しくて……』

 沈む意識の中で、聞こえるのは鈴のような声だった。

『……団さん、言いましたよね。自分の欲より、嘉明様の幸せを思って行動しろって。団さんが自分で言い出したんですから、破っちゃ駄目ですよ』

 淀む意識が、暗闇の中で覚醒する。声を捉え手を伸ばせと、魂が叫ぶ。しかし沈む世界は覚醒を弾き、団右衛門を押し上げていく。

『さよなら、団さん。自分がした事の責任、忘れたら許しませんからね』

 浮上する意識が映したのは、志智城の天井。そして団右衛門の横に座る、一二三の姿だった。

「ああ、よかった。ようやく目が覚めましたね。もう、一番重傷なのに無茶ばかりして、私怒っちゃいますよ」

「……ようやく? オレは……」

「鬼を倒して城に戻った後、団さん倒れたんですよ。丸一日お休みしてたんですから」

「嘉明は!?」

 団右衛門は跳ね起きると、嘉明を探して辺りを見回す。

「明さんはお仕事です。城の中で殺人ですからね。休んではいられないと、出て行かれましたよ」
 

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