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妖魔滅伝・団右衛門!

第1章 夜討ちの退魔師団右衛門

 
 八代は自身を根元まで潜らせ、流れる血潮に任せて硬直する。だが、欲を放つ前に、突然八代は嘉明から身を引いた。

 次の瞬間、八代の背中があった空間に走る刀の軌跡。八代は嘉明を抱き上げ確保すると、地を這うようなうなり声を上げた。

「退魔師が……邪魔をするなぁぁ!」

 八代を襲った刀には、経文が彫られていた。そしてそれを握るのは、鬼がもっとも嫌う匂いの持ち主。

「夜討ちの退魔師・団右衛門、参上!」

 退魔師とは思えない、みすぼらしい身なり。しかし言葉通り、団右衛門からは浄化の力が溢れ出ていた。

「団……右衛門……」

「ったく、外出するなって言った側から出掛ける馬鹿があるか! そんなやらしい姿にされちまって、馬鹿だろう!?」

 二度も馬鹿呼ばわりされるが、嘉明に反論は出来ない。薄ぼやけた頭では、未だに熱に浮かされた体を取り戻していなかったのだ。

「あーもう、人質とか面倒くせぇ。おい鬼! それはオレのだから、返せ!」

 団右衛門は刀を突きつけ、八代に迫る。だが、八代は牙を剥き出しにして威嚇するだけで、抱いた嘉明を離す気はないようだった。
 

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