妖魔滅伝・団右衛門!
第10章 さよなら団右衛門
「毎度毎度、皮肉だな」
かつては草が伸び放題だった土地。今にも崩れ落ちそうだった廃寺は取り壊され、こじんまりとした社――鬼塚が建てられていた。
まだ城も町も動き出していない朝早くに、嘉明は必ずこの社に足を運ぶようにしていた。そしてその傍らには、いつも団右衛門の姿があった。
「私は八千代に手を合わせに来ているのに、結果八代にも手を合わせている事になる」
「まあ、いいんじゃないか? 下手に恨まれて取り憑かれるなら、奉ってやった方がいいだろ」
「お前は取り憑かれるような祓い方をしたのか?」
「いや、怨念も未練も、全部綺麗に浄化したさ。だから鬼塚なんざ、生きてる人間の気休めにしか過ぎねぇ。だからここは、実質八千代だけの墓なんだよ」
嘉明は花と饅頭を供えると、手を合わせ長い間祈る。団右衛門はその背中を眺め、嘉明が立ち上がると首を傾げた。
「なあ、前から思ってたんだが、なんでいつも饅頭なんだ? そんなに八千代って饅頭好きだったか?」
「――ああ、好きだったようだ」
「ふぅん……? まあ、オレよりあんたの方が、付き合いは長いからな」