
妖魔滅伝・団右衛門!
第2章 嘘つき団右衛門
「……察しろ。聞けば、私は断るしかないぞ」
「それって、つまり」
嘉明が出した無言の答えに、団右衛門は性欲とも違う高鳴りを覚える。そして喜んで、引いた腰をまた沈めた。
(嘉明様、そろそろお目覚めになられたかな)
団右衛門が毒抜きを引き受けてから三日。そろそろ目覚める、と連呼していた団右衛門の言葉を信じて、八千代は嘉明の寝所へ向かっていた。一度毒抜きのため追い出されたが、八千代は時間も経っているため大丈夫だろうと踏んでいた。
しかし、部屋に近付く八千代の耳に入ったのは、苦痛の呻きだった。この声は、間違いなく嘉明のもの。また鬼が来たのかと考えた八千代は、脇差しの柄を取り、足を忍ばせた。
そっと襖を開けると、恥じらいなく響く嘉明の声。それが苦痛ではなく快楽から来るものだと気付くと、八千代はうつむき股を押さえた。
(な、なんでこんな!? 団さんも付いてるのに……まさか、鬼に殺されたとか)
躊躇った足が、最悪の想定に押されて進んでいく。そして様子を見ようと屏風の陰から顔だけ出すと、八千代の目に飛び込んできたのは信じがたい光景だった。
