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妖魔滅伝・団右衛門!

第1章 夜討ちの退魔師団右衛門

 
「そうそう、酒はいいもんだ。川に流れる水が全部酒ならこの世も極楽なんだがな」

 団右衛門はさして嘉明の言葉も気にせず、一気に酒を流し込む。それを見届けると、嘉明は改めて口を開いた。

「して、鬼とは? 皆には不安を与えまいと話していなかったが、実はここ数日奇妙な事が起きていてな」

「ほぉ、やっぱり。嫌な気配がずっと纏わりついているからな」

「触れただけで筆が折れたり、誰もいないのに開いていた戸が閉じたり、真夜中人魂らしきものが漂ったり……」

「そこまで分かりやすく怪奇現象が起きているのに、よく平然と外に出ていたな」

 常人なら恐れの一つも見せるところだが、嘉明は出会った時から変わらず気怠げでぶっきらぼうだ。器が大きいのか単に鈍いのかは分からないが、団右衛門は感心しながら杯を傾けた。

「そういえば、小姓の一人――八千代という者なのだが、彼がやけに怯えていたな。もしかしたら八千代は、鬼の気配に気付いていたのかもしれない」

「まあ、退魔の力まではなくとも、感じやすい人間はいるからな。そいつからも話を聞いてみたい」
 

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