
妖魔滅伝・団右衛門!
第2章 嘘つき団右衛門
「鬼は滅多な事でもない限り名前なんてないはずなんだが。名乗ったのか?」
「名前を訊ねられたその時、その場で思い付いたみたいだ」
「にしてもなんで八代なんだよ。八千代と被るじゃねぇか」
団右衛門は溜め息を漏らし、鬼の奇行に呆れかえる。訊ねられたから名前を考えた鬼など、団右衛門は聞いた事がない。強さもそうだが、頭の中身も想像が付かなかった。
「まあ、名前はなんでもいい。けど……鬼の精については、教えられねぇ。退魔師の秘匿事項だ」
「どうなるか分からなければ、対策が出来ないではないか。知識は武器になるんだぞ」
「んな事は分かってる。でも言えねぇ。こればかりは、世の中を乱さないためにも絶対の御法度なんだ」
だが嘉明は、納得せず団右衛門をじとりと睨む。
「まあ……一度や二度で、何かなるようなものじゃない。影響が完全に現れるまでは、それこそ何十年も掛けて注ぐ必要があるんだ。受けない方が健全なのは当然だが、猶予はあるから安心しな」
「……まさか、退魔師の精も効果が出るまで時間と量が必要なのか?」
「ん? そりゃもちろん。毎日朝と晩、二回くらいやらなきゃな」
