
妖魔滅伝・団右衛門!
第1章 夜討ちの退魔師団右衛門
すると嘉明は小間使いを呼び寄せ、何かを言い渡す。おそらく、八千代という小姓を呼んでくるように言いつけたのだろう。嘉明が再び腰を落ち着けると、団右衛門は杯を下ろし腕を前に組んだ。
「ま、どちらにしてもオレが来たからには安心よ。オレはあの織田信長にも仕えた事のある退魔師だ。良い酒もいただいちまったし、きっちり鬼退治をしてやるぜ」
「私が自ら表に立ち、退治してはいけないのか? 武勇には自信があるのだが」
鼻息荒く意気込む訳でもなく、淡々と語る嘉明。だがその言葉は、団右衛門を驚かせるものだった。
「私を狙うなら、私が将となり立ち上がるのが妥当だろう。夢見が悪く、こちらも苛立ちを覚えていたしな」
「おいおい、そんな事言い出す依頼人は初めてだぜ。見かけによらず、荒武者なんだな」
言葉の割に、嘉明の表情はぶっきらぼうのままだ。あまり感情を表に出さない人間なのだと、団右衛門は察する。団右衛門には、嘉明の意図は読み取りにくかった。
「まあでも……やめておいた方がいい。オレは鬼の気配に気付いて淡路に来たが、ここは予想より遥かに平和で栄えていた。あんたを見かけなきゃ、鬼の存在を確信できなかったんだ」
