
妖魔滅伝・団右衛門!
第3章 加藤と加藤と団右衛門
「やっぱり、この傷」
「おい、鬼じゃないとはどういう事だ! 人がこのような所業に走ったとでも?」
「ああ、まさしくその通りだ。見てみろよ、滅多刺しにされてるから分かりにくいが、取られた心臓以外は刀傷だ。鬼は刀より鋭い爪を持っている、だから刀なんて使わない。仮に心臓を取ったのが鬼でも、刀で切り刻んだ第三者がいる可能性は高い」
団右衛門の分析に、武士達はおののきざわめく。第三者が手を加えたのだとすれば、それは間違いなく狂人の仕業。人間の皮を被っていても、鬼と同質だった。
言葉を失う武士達を尻目に、団右衛門はさらに観察を続ける。殺された武士は、よく見てみると腐敗度が違う。死後時間の経っていない死体もあれば、既に体が崩れ始めた死体もあった。
(もしかすると、一気に殺すんじゃなくて、一人ずつ時間を置いて殺したのか? なんでそんな回りくどい事をするんだ)
一人ずつ仲間の骸が増えていけば、精神はこれ以上なく責め苦を感じるだろう。拷問だとすれば、納得である。
しかしそうなると、殺人現場は間違いなく異空間の中だ。外で殺し放置すればわざわざ時間を置く意味がない上、死体が見つかる危険もあるのだから。
