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妖魔滅伝・団右衛門!

第3章 加藤と加藤と団右衛門

 
 しかしそれは、刀傷と矛盾する。刀傷を付けた者が人間なら、団右衛門ですら見つけられなかった異空間への道を開き、死体を損壊した事になる。そもそも異空間が破られれば、団右衛門も察知出来るはずなのだ。人間が犯人なら、異空間での殺人は有り得なかった。

(心臓の行方も気になる。鬼が食らったなら、一人だけでも力が飛躍的に高まるはずだ。それを複数食らって、気付けないはずがない。だが鬼が食らったのでないとすれば、犯人が人間なら……なんのために心臓を取ったんだ?)

 鬼はおそらく、心臓を食べてはいない。鬼と対峙していない以上確信は出来ないが、団右衛門はそう信じていた。

(鬼が犯人でも人が犯人でも、何かしら矛盾が生じる話。唯一納得いく仮定があるとすれば、それは)

 ――鬼と人間が、繋がっている。真っ先に頭に浮かんだのは、八千代の存在だった。

 だが八千代は嘉明にべったりで、嘉明の就寝から起床の時以外はなるべく離れようとしない。夜に城を抜け出そうとしても、小姓は嘉明の警護を務めるなど、嘉明が寝た後の仕事も多いのだ。毎晩抜け出していれば、小姓仲間の誰かが気付くはずである。
 

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