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妖魔滅伝・団右衛門!

第3章 加藤と加藤と団右衛門

 
(だが、八千代に纏う鬼の気配がいつまで経っても消えないのも事実だ。多分、向こうはそうとう八千代を意識してる。悪い事に利用される可能性が、ないとは言えないな)

 八千代の動向を確かめてみなければ、どんな考察も推測の域を出ない。団右衛門は死体を他の武士達に任せ、一足先に城へと戻った。

 八千代は今日も嘉明のそばで、身の回りの世話をしているはずだ。死体の存在を知れば、間接的とは言え原因を作った八千代、嘉明も気を落とすだろう。落ち込む姿は見るに忍びない、と団右衛門も気に病んでいると、道端に小さな妖魔の気がある事に気付いた。

「こいつは……」

 団右衛門は足を止め、草むらを掻き分ける。そこにいたのは、虎模様をした一匹の猫だった。ただし、その尻尾が二股に分かれた、化け猫だが。

 団右衛門は化け猫の首根をひょいと摘み、抱きかかえる。国中どこにいても鬼が隣にいるような気配が怖いのだろう。人が触れたにも関わらず動かず、体を縮め怯えていた。

(これ持ってったら、嘉明の気も紛れるかな)

 団右衛門の脳裏に過ぎるのは、八千代ではなく嘉明の憂い顔。可愛い猫がそばにいればそれも和らぐかと考え、団右衛門はそれを抱え再び走り出した。
 

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