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妖魔滅伝・団右衛門!

第3章 加藤と加藤と団右衛門

 






 団右衛門が城へ戻り、一緒にいた嘉明と八千代に声を掛ければ、やはり突っ込まれるのは化け猫の存在だった。

「団さん、その猫は? 尻尾が二本あるような気がするのは、ぼくだけでしょうか」

「気のせいじゃないぞ、猫又だ」

「猫又? それ、悪い妖怪じゃないんですか?」

 怯えて動けない猫相手に、八千代は警戒を向け唇を噛み締める。だが嘉明は八千代を制し、猫に手を伸ばした。

「待て、八千代。猫を殺すと七代先まで祟られるぞ。それにこの猫又、随分と怯えているようだ」

 嘉明は団右衛門から猫を受け取ると、抱きかかえて頭を撫でる。猫又も人を食らうと言われているのに、嘉明は気にする様子もなかった。

「あ、危なくないんですか?」

「多分大丈夫だ。だから団右衛門もここまで連れてきたんだろう?」

「ああ。鬼の気配に怯えて可哀想だったから、連れてきてやったんだ。猫又もあんたみたいな清浄な人間は好きだろうから、ここなら落ち着くと思ってな」

 適当な言い訳で誤魔化すが、あながちそれも嘘ではない。事実嘉明に抱かれた猫は態度を和らげ、のどを鳴らし嘉明に身を委ねていたのだから。
 

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