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妖魔滅伝・団右衛門!

第3章 加藤と加藤と団右衛門

 
 外とはいえ、おそらく鬼は、城の中へ入っても警戒されにくい人物を選んで乗っ取るはずだ。団右衛門は嘉明の肩に手を置き、子どもへ言い聞かせるように力強く話した。

「これからその人間を使って、また鬼が侵入してくるかもしれない。商人か武士かは分からないが、外から来た奴には充分気を付けるんだぞ。いいか、誰が相手でも、絶対二人きりになっちゃ駄目だからな!」

「信用がないな、私は」

「あんたは注意されたそばから飛び出す依頼人だから、仕方ねぇだろ」

「安心しろ、今はこの猫又もいる。これをそばに置くだけで、誰かと二人きりではないだろう」

 嘉明は猫又の背を軽く叩き、いつになく優しい声で呼び掛ける。

「私を守ってくれるな? トラ」

 すると猫又は顔を上げ、返事をしたかのように鳴いた。

「良い子だ。褒美に後で鮭をやろう」

 猫の力で嘉明の苦痛を癒やし、慰める作戦は見事功を奏している。いつもの無愛想が緩和され、戯れる嘉明の姿には団右衛門も目を奪われてしまう。しかしあまりにも素直過ぎて、つい普段の自分の扱いと比べてしまい嫉妬心が沸くのも事実だった。
 

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