
妖魔滅伝・団右衛門!
第3章 加藤と加藤と団右衛門
「嘉明様!」
団右衛門が口を尖らせていると、八千代は嘉明の前で輝いた瞳を向ける。
「ぼ、ぼくも触っていいですか? 怖くない妖怪なら、ぼくも」
だが八千代が手を伸ばすと、猫又は牙を向き噛みつこうとする。慌てて手を引っ込めたため怪我はなかったが、猫は唸り、いつでも牙を立てられるよう警戒していた。
「どうした、トラ。人を傷つけてはならない」
嘉明は諫めるが、猫の警戒は止まらない。八千代は肩を落とすと、諦めて引いた。
「なんだか、嫌われちゃいましたね……なんでだろう」
団右衛門も、猫又の態度の変わりようには首を傾げる。好き嫌いにしても、あまりに厳しいような気がしたのだ。
「初めに疑ったのが悪かったか? いや、それとも嘉明を奪う敵だと思ったか」
「敵!?」
「ほら、その猫メスだろ? 八千代も顔は女みたいに可愛いから、嫉妬したのかも」
「……ぼくは女でも敵でもありません」
八千代は不服そうに頬を膨らませるが、嫌われたものは仕方ない。団右衛門は嘉明に、なるべく八千代と鉢合わせにしないように気を付けろと注意して、話を本題に戻した。
