
妖魔滅伝・団右衛門!
第3章 加藤と加藤と団右衛門
「ぼくは、嘉明様以外の人に仕えるなんて考えられません! ぼくは嘉明様が一番で、最強だと思っていますから!」
「……下手な媚びはよせ、八千代。同じ加藤で賤ヶ岳の七本槍とはいえ、清正と私では格が違う。私とて槍働きで劣る気はないが、清正が飛び抜けているのもまた事実だ」
秀吉の今を築くためには、絶対に負けられなかった賤ヶ岳の戦い。そこで特に武功を上げた七人を、秀吉は「賤ヶ岳の七本槍」と讃えた事がある。世間で有名なのは福島正則と加藤清正であるが、嘉明も名を連ねているのだ。
「清正が自ら足を運んできたのなら、会わぬ道理はない。今すぐ行こう」
八千代の言葉にも耳を貸さず、嘉明は眉間に皺を寄せたまま立ち上がる。嘉明は何事にも無関心なようで、自らの腕には高い矜持を抱いている。その嘉明が自分を差し置き、同じ名字、同じ主君、同年代の武将を絶賛されたら、機嫌を損ねるのも無理はなかった。
「あー……あのさ、オレも一緒に」
「来る必要はない。清正は旧知の仲だ、久々に会う友との時間を邪魔しないでくれるか。せっかく水入らずで話している所に、不躾な態度で仕官でもされては私の立場もないからな」
