テキストサイズ

妖魔滅伝・団右衛門!

第3章 加藤と加藤と団右衛門

 
 初めに口が滑ったのは団右衛門だが、嘉明の言葉には悪意がある。団右衛門はそれに腹を立て床を蹴ると、嘉明の腕を掴んだ。

「なんだよその言い草! オレが依頼も放って、あんたをダシに仕官するような人間に見えんのかよ!」

「ついさっき清正に仕えたいと言ったのはどこのどいつだ。なんだったら私が口利きしてやるか? 別に私は構わないぞ」

「んだって!?」

 団右衛門が拳を握ったのを見ると、八千代は慌てて二人の間に割って入る。小さな体でなんとか二人を引き剥がすと、嘉明の背を押して部屋の外に向かった。

「と、とにかく清正様がお待ちですから行きましょう!? ほら、猫又を見ればきっと清正様も驚きますよ。可愛い家臣が増えたと自慢しちゃいましょう!」

 八千代は報告へ来た小姓にも目配せして、二人で嘉明を連れて行く。置いていかれた団右衛門が最後に見たのは、襖を閉める時に八千代がこちらに向けた怒りの瞳だった。

「ちっ……なんだよ八千代の奴、結局嘉明の味方か」

 八千代が嘉明側につくのは至極当然だが、団右衛門はそれも気に食わず舌打ちする。苛々した頭は無性に酒を欲し、団右衛門をせっつかせた。
 

ストーリーメニュー

TOPTOPへ