
妖魔滅伝・団右衛門!
第3章 加藤と加藤と団右衛門
(どうせ今日はあいつも清正と宴会だろ。オレは邪魔者だし、引っ込んだって構うもんか)
鬱憤を発散するなら、一人で飲んでもつまらない。城下で遊女でも捕まえて愚痴ろうかと考え、団右衛門も部屋を出る。嘉明から、贅沢しても困らない金子は受け取っているのだ。当てこすりのため派手に使ってやろうと、団右衛門は足を進めた。
だが上手くいかない日は、とことん上手くいかないのが摂理である。団右衛門は遊女をはべらかし酒に溺れ胸の靄を忘れようと耽ったが、いざ遊女を抱こうとしたら、彼女はとりつく島もなく誘いを断ったのだ。
「馬鹿を言うんじゃないよ、あたしらはお殿様の下で暮らす民なんだよ。そのお殿様の悪口を吐き出す奴にくれてやる体なんかないね」
「なんだって!? もらった金の分だけ仕事しろよ、あんたこの近辺で一番の女なんだろ!?」
「はん、だからこそあんたみたいに金で頬を叩くような下衆に、体は渡さないんだよ。あたしに相応しい男は、お殿様くらいさ」
「殿様殿様って、あいつこんな所に来ないだろ!」
「来るわけないだろ、お殿様なんだから! でもさ、一度だけ城に呼ばれた事はあるよ。呼んだのはお殿様じゃなくて、秀吉様だけどね」
