
妖魔滅伝・団右衛門!
第3章 加藤と加藤と団右衛門
(まだ朝も来ないし、下手に騒いだせいで目も覚めちまってるし、どうしたもんかね。くそ、全部嘉明のせいだ)
いっそ本当に清正へ突撃仕官して嘉明を困らせようかと、ふと団右衛門は思い付く。楽しい宴会を壊されて慌てる嘉明の姿を想像すると、少し気が楽になった。
(……でも、もしあいつがなんの反応もしなかったら?)
しかし頭に過ぎるもう一つの仮定が、団右衛門の胸を底なしに冷やす。売り言葉に買い言葉だが、嘉明は口添えすると話していたのだ。慌てて団右衛門を引き止めるどころか、清々したと言わんばかりに明け渡してしまうかもしれない。
(それどころか、親切心で本当に話を通しちまってたら……)
嘉明の考えは、今一つ分からない。もしかすると団右衛門の言葉を真に受けて、余計な気を利かせている可能性もある。もし清正がそれを承諾したら最後、団右衛門はもうお払い箱になってしまうのだ。
冷え切った胸が、ずきずきと痛む。いくら団右衛門が掻き抱いても、決定権を持つのは嘉明なのだ。いらないと言われてしまえば、団右衛門が自分の有用性をいくら説いても、追い出されてしまうのだ。
