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妖魔滅伝・団右衛門!

第3章 加藤と加藤と団右衛門

 
 切れ長で涼しげな瞳。男らしく凛々しい眉。一目見ただけで別格の空気を醸し出す、虎のように勇猛な男。それが加藤清正という人間だった。

「城は素晴らしいな。私もいつか、理想を詰め込んだ最高の城を作るのが夢だ」

 細身で中性的な嘉明が屈強な清正と向かい合うと、同志というよりは夫婦にも見える。それだけ二人は馴染みがあり、共にあるのが当然な仲であった。

 嘉明は猫又を膝に乗せて愛でながら、清正と二人の宴を楽しむ。たわいもない話は厳しい現状に削り取られる心を癒やし、余裕を与えていた。

「ところで嘉明。その猫又、退魔師が拾ってきたと言っていたな」

「ああ。気性は好かぬが、役に立つ男だ」

「強いのか? そいつは」

「さあ、まだ戦っているところをまともに見ていないから分からないな。しかし力に自信がなければ、自分を最強の退魔師だとは言わんだろう」

 すると清正はやけに深刻な顔をして、嘉明を見つめる。

「清正……?」

「その男は、信用するな」

 様子のおかしな清正に、嘉明は首を傾げる。嘉明の知る清正は、顔も合わせた事のない未知の人物を、ろくに話も聞かず否定するような男ではないのだ。
 

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