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妖魔滅伝・団右衛門!

第3章 加藤と加藤と団右衛門

 
「なぜ唐突にそんな事を言い出す? 私の見る目を疑うつもりか」

「疑いじゃない、事実だ。決して信用するな。その退魔師は、俺が何者か気付いていない」

 清正が立ち上がり近付くのを目で追いながら、嘉明は酔いの回る頭で不意に考える。団右衛門は、外から来た人間と決して二人きりになるなと釘を刺していた。やってきたのが旧知の仲である清正だから警戒していなかったが、彼も同じく、気を付けなければならない人物ではないかと。

「清正――っ!」

 だが嘉明が退こうとした時、清正は既に嘉明の肩を掴み、床に組み敷いていた。猫又を壁に投げつけ気絶させると、清正は暴れる嘉明の腕をひとまとめに荒縄で縛り、足も同じようにして、丸薬を口に放り込む。そして嘉明の口を無理やり開かせると、唇を重ね、含んだ丸薬ごと舌を侵入させた。

 効果の程は分からないが、丸薬を飲み込んでしまえば命すら危うい。清正を押し出そうと抵抗するが、獣のように食らいつく口付けは嘉明の心に牙を食い込ませる。

「ん……ふ」

 皮肉にも、団右衛門が仕込んだせいで快楽はすぐに嘉明を破る。脳裏に過ぎる経験がこの先の期待を呼び覚まし、目の前の男へ従順に身を預けた。
 

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