
妖魔滅伝・団右衛門!
第3章 加藤と加藤と団右衛門
清正は嘉明を抱き起こし座らせると、胸を膳に乗せ、首だけ垂れ下がるようにする。手足を縛られ頭を垂れる姿は、罪人のようである。
「俺もすぐにそちらに向かう。だから……安心して逝ってくれ」
清正は腰に下げた刀を抜き、しっかりと構える。見つめるのはただ一点、嘉明の細く白い首だけだ。深呼吸して気を集中すると、清正は目を見開いた。
が、刀を首めがけて振り下ろそうとした瞬間、部屋の襖がなんの声掛けもなく開く。息を切らし現れたのは、清正には見覚えのない男だった。
「嘉明っ!」
主君の名を軽々しく呼ぶ不躾な男――団右衛門は、嘉明と清正の姿を見ると目を丸くする。清正は団右衛門の名を知らないが、何者なのかは分かっていた。
「……退魔師だな」
「な、何だよこれ、何でんな事になってんだ」
「俺の正体に気付いて来たのではないのか? やっぱり、信用ならないな」
団右衛門もまた清正の顔は知らなかったが、刀を構え今にも嘉明の首を跳ねようとしている彼が清正なのはすぐに分かる。だが、頭の混乱はなかなか解けなかった。
「正体……? まさか、あんた」
