
妖魔滅伝・団右衛門!
第3章 加藤と加藤と団右衛門
刀に刻まれた、経文。身の内から溢れる、浄化の気配。加藤清正という偉大な武将の名前で思考が停止していたが、彼は、団右衛門と同類であった。
「退魔師……なのか」
「鬼の気配が濃すぎて、感覚が鈍っているんじゃないか? 同業者がここまで入り込んで気付かなかったとは、情けない」
清正は嘉明に向けていた刀を団右衛門の方に構え直す。主君を殺そうとした清正に向けられる団右衛門の視線は、怒りに満ちて険しかった。
「まさか、あんたが退魔師だとはな。だが退魔師として足を踏み入れたなら、どうして被害者の嘉明を狙う? どうせなら鬼を殺せよ」
依頼を受けた者が直々に援軍を要請した時でもない限り、受けた仕事に割り込むのは退魔師の作法に反している。ましてや依頼人を殺すなど、人道的にも反していた。
「鬼を殺さないって事は……あんたが鬼と手を組んでいるのか?」
頭に過ぎるのは、武士達が死んだ不可解な事件。もし鬼と退魔師が共犯ならば、異空間に侵入出来た事も説明がつく。
が、清正は疑われた瞬間激昂し、団右衛門に向けて刀を振り下ろしながら怒鳴った。
「馬鹿を言うなっ!!」
