妖魔滅伝・団右衛門!
第4章 足軽退魔師団右衛門
清正の力がさらに強くなり、団右衛門は再び壁際に追いつめられる。だが絶望的な状況にも関わらず、団右衛門の笑みは消えない。清正がそれに違和感を覚えた瞬間、背後から獣の咆哮が響いた。
いつ来るともしれない嘉明の家臣に、清正は無意識の内に焦りを覚えていた。その焦りが、清正の足を一歩遅らせる。背後から迫る獣――こんな所にいるはずもない虎が、団右衛門も巻き込みのし掛かってきたのを、清正は避けられなかった。
二人で虎に押し潰されたその時、慌てた家臣が部屋の中に入ってくる。
「いかがなされました、嘉明さ――まっ!?」
家臣の目に入ったのは、膳に突っ伏して呑気に眠る、ように見える嘉明。そして人より大きい虎と、その虎に顔を舐められている清正、虎と清正に潰された団右衛門だった。
「な、な、何が!? 虎!?」
有り得ない光景に家臣は目を白黒させ、どうしていいか分からず立ち尽くす。すると団右衛門が潰されたまま、大声で笑い始めた。
「はははは、悪りぃ悪りぃ。宴の見世物にと思って猫又を妖虎に進化させてみたらさ、妖虎が清正に惚れちまって。で、この有り様だ」