妖魔滅伝・団右衛門!
第4章 足軽退魔師団右衛門
それでも擦り寄る虎の頭を、清正は胡座を掻くと膝の上に乗せた。
「この虎は、一体どこから出した? 何をしたんだ、お前は」
団右衛門も座って落ち着くと、懐から札を取り出す。そして自慢気にひらひらと扇ぎながら、口を開いた。
「この札は、妖力を増幅させる効果があるんだ。これを、部屋の隅でぐったりしていた猫又に投げて回復させたのさ。まさか効果が強過ぎて、妖虎になるとは思わなかったけどな」
「さっきから俺に懐いているのも、札の効果か?」
「いや、それも予想外。どうやら自分を倒したあんたを、主と認めたみたいだな」
団右衛門は飄々と語るが、もし妖虎があの時清正に敵意を持っていたら、危険だったのは清正である。雷の札をばらまいたのは、回復の札に気付かれないための囮。そして清正の意識を団右衛門に引き付ける策だ。団右衛門は退魔師としての力全てを持って、戦っていたのだ。
「……俺は、猫又を妖虎に進化させる程の力はない。退魔師としての技量は、お前が勝っているのかもしれないな」
清正がすっかり失念していた猫又の存在に注目する冷静さ、それを奇襲に生かせる頭の回転率、憤っていた清正の心は、小気味よく躍っていた。