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幻星記序章~白夜の時終わりぬ…だが黎明の時来ず

第9章 セナ

セナと共に…町に出たリューン。町中の老若男女が、声を掛けて来る。にこやかな笑顔と声で返すセナ。オーラを反転させ、別人になりすます。
「こんにちわ…。」「お久しぶり…。」当惑するリューンを尻目に気さくに声を掛け合う。
「セナちゃん…。」「セナ…!久しぶり…。」町の中ほど…果物店に足を止める。
「こんにちわ…。〈ループ〉ある!?。」〈ループ〉は、マンゴーほどの大きさの黄色い果物で口の中ですぐに溶けるほどに柔らかい。その為…運搬には、非常に手間がかかる上、値段がべらぼうに高い。〈傭兵〉の宿代五日分ほどする。
「ちょうど…。いいのが入ったところだよ…。」絹の袋に入った〈ループ〉を指差す。
「五つ…頂戴…。」
「五つだね…。持って行こうか?」
「お願い…。」〈札〉を手渡す。〈札〉は銀細工製の中心に貴石の紫水晶を嵌め込んだ…セナの手の中にすっぽり入る大きさのもので〈剣〉の買い物に使う。
「綺麗な飾りだな…。」
「〈札〉よ…。〈剣〉様の買い物は、高いものが多いから…お金の代わりよ…。」
「ふーん…。そうなんだ…。本当ー綺麗だな…。」
「リューン…欲しいの?。」
「うん…。い、いや…。その…。」
「はい…」一枚を手渡す。
「いいのか?…。」
「預けるだけよ…。」
「う、うん…。」がさごそと、首から下げているお金袋を取り出し入れようとする。
「銅貨は、ぽけっとに入れてね…。」
「う、うん…。」銅貨をぽけっとに入れ、〈札〉を袋に入れる。
「昼食を取ろう!。」
「う、うん…。」住宅街へ向かう。少し入った所にこじんまりとした一軒家が、見えて来る。
セナによく似た少し年上の女性と二人の少女が玄関先で待っていた。
「セナー!。」下の少女が、飛び込んで来た。上の少女も負けじと飛び込んで来る。
「きゃぁー。」倒れそうになり、後ろにいるリューンにもたれる。
「うわっーと。」咄嗟にー胸を掴む。
「ひぃー!!。」
「ありぃー!?。」ばちんー頬を叩かれる。
「あらあら…大変…。」落ち着き払った声を上げるエナ。
「リューン…のすけべー!!。」両腕で胸を包みながら言う。
「へぇへぇーん…。」にやけた顔のまま言う。
「中に入りましょう。」

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