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幻星記序章~白夜の時終わりぬ…だが黎明の時来ず

第9章 セナ

室内は、一通りの調度品が置かれている。下の少女シュサがセナの腕を掴み、席に案内する。イリアがリューンの裾を引っ張る。
「リューン…。十三形書いて…。」
「ほへぇー。何で!。」
「あたし…書く!。」シュサが少し歪な十三形を書く。負けじとイリアも書く。こちらも少々歪である。リューンもしかたなく書く。
「下手ね…。」完璧に近い形を書く。
「すげぇー。」
「リューン…。ガマーの出でしょう…。」
「へぇー!。そ、それは…。」ガマーの出である事は、知られてはならない。カーンに口止めされていた。
「〈手打ち〉にされると思ったの?」
「うう…ん。」
「そんなに安くないわよ…。」
「う、うん…。」
「時計の描き方から教えないといけないなんて…。」
「一年は、十三月の三十日で三百九十日…残り十日を新年祭。三年ごとに一日増える。」
「それは…覚えていたのね。じゃぁー月ごとに〈剣〉様の〈通り名〉が、ついてる事は?。」
「う、うん…大丈夫。」
「そう…。今月は?。」
「虹石の月…。」
「当たり…。」
「う、うん…。」
「二人共…お茶が入ったわ!。」食事にありつける喜びに我を忘れるリューン。食卓に並べられた量の多さに戸惑う。
「遠慮は、いらないわ…。」
「頂きます…。」手を合わせ、一礼すると…がつく。
「うめぇー。こっちも…。」
「こぼれているわよ…。」
「お前は、食べないのか?。」
「えぇ…。いらないわ…。」
「お茶のお代わりは?。」
「ありがとう…。頂くわ。」
「リューン君も入れてあげるわね。」
「うん…。」
「シュサ…こぼれているよ…。」
「ありがとう…イリアお姉ちゃん…。」エナに頭を撫でられるイリア。
「お母さん…恥ずかしいよ…。」
「シュサもー。」
「セナ…。二階へ行きましょう。」
「はい…。エナ。」二人は、そそくさと二階へ上がって行った。不思議そうな顔で二人を見送るリューン。しばらくして…セナのオーラが少し上がった。
「!?。」
「お待たせ!。行きましょうか?。」
「セナ…。」
「なあーにぃ?!。」
「い、いや何でもねぇー!。」リューンの腕を絡め取り
「行きましょう!。」
「う、うん…。」
「気をつけてね。」
「いってらしゃーい!。」イリアとシュサが声を掛ける。
「二人共…気をつけてね。」エナが二人の娘と共に…玄関まで見送る。
十三時の大きな鐘がなる。

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